127人が本棚に入れています
本棚に追加
15-1 未明
泉神殿の後始末を終え、ゾーイが王城内の割り当てられた部屋に戻った時は、すでに深更を過ぎていた。
さすがのゾーイも疲れきり、佩剣を外して壁に立てかけ、もどかしく軍靴を脱ぎ捨てる。簡易の胸当てを外すのもおっくうで、いっそこのまま寝てしまおうかと思った時、寝台で眠っていると思った妻が起き上がり、無言で胸当てを外すのを手伝い始める。
「……起きていたのか、アリナ」
「ええ。お疲れ様です」
「胎の子によくない。俺はいいからまだ寝ていろ」
「ひと眠りしたから、大丈夫よ」
アリナが慣れた手つきで鎧を外していく。鎧も籠手も、全て外れると、綿入れの戎服を脱ぐ。下着姿になってようやく、人心地ついた。ゾーイが戎服を椅子の背にかけ、鎧を櫃の上に置いていると、アリナが盥にお湯と、布を持ってきた。
「すまんな、こんな時間に」
「いえ、魔導ポットにお湯を溜めておいたの。帰りが遅くなってもいいように。拭うだけでもスッキリするでしょうから」
熱いお湯で顔を洗い、絞った布で身体を拭く。生き返るような気分だった。
「王城は、変わりなかったか」
最初のコメントを投稿しよう!