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ゾーイの問いかけに、だが、アリナは下を向いて唇を噛んだらしい。
「姫様が――」
「やはり、ダメだったか」
認証の間で、ゾーイはぐったりと気を失った主夫妻を目にしていた。ゾーイは視えないが、メイローズが赤子の〈王気〉が消えたと言っていた。――わずかな希望に縋りたかったが、マニ僧都やジュルチ僧正らの治癒術者もみな魔力が枯渇し、他の怪我人の手当などで精いっぱいだった。
「わたしは騎士失格です。肝心な時に、全くお役に立てず……」
涙を零す妻を、ゾーイは慌てて抱き寄せる。
「お前のせいじゃない。……あの場にお前がいたら、流産が二人になっただけだ」
「そんなのわかってる! でも……いったい、どんな顔でお目にかかればいいのか……」
ゾーイもそれは思う。同じように懐妊して、それを理由にアリナは後方に下がり、無事だった。だがアデライードは自ら認証の間に赴く以外にない。その結果、子を失った。――主もまた、どんな気持ちでいるか。
「姫君も陛下も、そんなことでお前を責めたりはせぬ」
「そんなことはわかっています!……だからこそ、辛くて……」
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