学生会館ラウンジ

3/6
前へ
/706ページ
次へ
「北原くんは男子校だったのよね?」佐伯先輩が僕を見て言った。  僕は、「はい」と答え、質問の先回りをして、「だから、出会いのチャンスなんてありませんでした」と言った。  すると、佐伯先輩は「北原くんは男子校だから、仕方ないとして、小山くんと中垣くんは、共学だったのよねえ」と言った。  中垣が、その言葉にカチンと来たのか、 「佐伯先輩。男女共学の男が、みんな彼女がいるっていうのは、偏見ですよ」と声を上げた。  佐伯先輩にしたら、可愛い後輩と親しくなりたい一心でからかっているのだろうが、根が真面目な小山と中垣には、佐伯先輩の冗談が通じないみたいだ。  佐伯先輩は「気に障ったら、ごめんねえ」と言って、 「私自身が女子高だったから、その辺、あまり分かんないのよねえ」と苦笑した。 「そういう佐伯先輩は彼氏とかいるんですか?」小山が訊ねると、  横の伊藤が「おいっ」と小山の脇腹を小突いた。  その理由・・佐伯先輩は噂では、同じ文芸部の四回生の先輩に振られたようだ。つき合っていて振られたのか、それとも未だ交際に至っていなかったのか、それは分からない。  伊藤に戒められていた小山を見て佐伯先輩は、 「別に気にしなくていいのよ。落ち込んでいた時期はとっくに過ぎちゃったから」と笑った。  そう言われても小山は気にしているのか、「すみません」と謝った。
/706ページ

最初のコメントを投稿しよう!

346人が本棚に入れています
本棚に追加