朗報

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 ただ、問題は自殺の原因となった渡辺さんの事をどう思っているかだ。 「四回生の渡辺さんはその事を知っているんでしょうか?」  九条さんが訊ねると、 「たぶん、まだ知らないと思うわ。ご両親が伝えていれば知っているでしょうけど」と佐伯さんは言った。「渡辺さんには、真山部長が言うと思うけど」  すると、九条さんが僕たちの声を代表するように、先日の渡辺さんの事を話した。  渡辺さんは不意に部室を訪れ、自分の詩が載った同人誌を探しに来たのだが、吉原さんの事を話題に出さないばかりか、廊下に女性を待たせていた。吉原さんのことを想う詩をその女性に見せるためだ。  最低の男だ。更に言えば文章が下手くそだ。 「そんなことがあったの・・」佐伯さんは悲しそうな顔を浮かべた。そんな話を吉原さんが聞けば悲しむ、そういう意味の顔だ。 「僕たちもその場にいましたから」僕が言った。 
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