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その小山とは対照的な男がいる。中垣という男だ。彼は日本文学はまるで関心がなく、ドストエフスキーばかり読んでいる男だ。それ故か、小山が漱石を読んでいるのを見下している節がある。
ある日のこと、
「日本の文学は、大長編がないと思わないか?」
いつもの部室の雑談中、中垣はそう言った。
すると伊藤という部員が「そういや、そうだな。ドストエフスキーやトルストイは、長い小説ばかりだな」と言った。
伊藤は、小山や中垣と比べるといたって普通の男だ。
「それだけじゃない。プルーストの『失われし時を求めて』は、13巻もあるし、『チボー家の人々』も同じくらいの量だ。「風と共に去りぬ」も何巻もある」
中垣はそう言って、
「どうしてか分かるか?」と僕や伊藤や小山に向けて訊ねた。
三人が黙っていると、小山はこう言った。
「つまりは・・体力だよ!」
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