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つまり、中垣が言うのはこういうことだった。
日本人には体力がない。だから西洋の小説に比べて日本の小説は短い。
更に言うなら、心も弱い。川端康成、太宰治、芥川龍之介に三島由紀夫。みんな自殺してしまう。これは西洋と比べて宗教観の違いもあるが、心の弱さが要因なのかもしれない。中垣はそう言った。
なるほど・・僕はそう思った。今までそんな視点で作家を見たことがなかったので、面白い考え方だと思った。
当然ながら、中垣は五木寛之を文学とは思っていない。更に中垣は、かなりの右系だった。いつもミリタリー系の服で身を固めているし、愛読雑誌も「丸(まる)」とかいう自衛隊や軍隊の専門誌だった。
これも僕の知らない世界だった。これまで僕は軍備はおろか、政治のことなど考えたこともなかった。
それまで話を聞いていた伊藤が、
「考えたら、恋愛も体力がいるからな」と話を脱線させた。
「ええっ、そうなのか?!」思わず僕は声を出した。
恋愛にも体力が必要・・そんなこと、考えたこともなかった。
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