学生会館ラウンジ

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「みんなは入部したばっかりだから、私、みんなのこと、あんまり知らないのよねえ」  それはその通りだ。僕たちは入部してから、時間が経っていない、まだ5月の長期の休みが過ぎたばかりだ。  つまり、佐伯先輩の興味本位から、僕たち一回生の男子に彼女がいるかどうかの質問をしたわけだ。  その結果、伊藤を除き、僕と小山と中垣は彼女がいない組に認定された次第だ。    佐伯先輩は、「みんなは、彼女なしで学生生活を送っていて楽しいの?」と言ったり、「じゃあ、ゴールデンウィークとか、みんなどうして過ごしてたの?」と追い詰めるように訊いた。  悪気はないのだろうが、そんなことを言われてもどうしようもない。  それに、まだ入学して、一か月足らずだ。彼女を作るなんてこと考えてもいなかった。  伊藤が「あのお、僕は彼女、いますが・・」と手を上げたが、佐伯先輩の関心は、彼女のいない組に向けられている。だが、当の小山と中垣は全く気にしていない様子だ。  小山は、男女交際よりも漱石を読んでいる方が幸せそうだし、中垣も同じように海外文学の分厚い本を読んでいれば満足のようだ。  いや、それ以前に二人の服装を見ても、とても女性を意識しているとは思えない。僕も人のことをとやかく言うような格好はしていないが。
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