いっそのこと。

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その日の講義は2コマのみだった。 授業が終わりテキストを片付けて帰り支度をしていると、ひとつ前に座っていた榊が声をかけてきた。 榊「なぁ、明日の夜飲みに行かね?」 玲「え...いいけど、他に誰か来んの?」 榊「聞いて驚くな、文学部の女子が4人だ」 玲「............やっぱパスで」 榊「やーーーーーーーお願い!!お前はいるだけでいい! 男子も後2人ちゃんと呼ぶから!」 玲「じゃあ榊が俺の分の飲み代出してくれるならいいよ」 榊「出す!!マジで出す!!だから来て!お前の名前出さないと女子が集まらなくてさ...」 榊がここまでして頼み込んでくるのには理由があった。 同大学の文学部女子は合コンでのお持ち帰り成功率が高いと他学部男子どもの間では密かに有名なのだ。 そのため、卒業する前に男子たちは女子と短期間、いや、たとえ一夜限りの関係だったとしても甘酸っぱい記憶を残すために燃えているらしい。 それに加え、俺が女性と話すことが苦手であることを知っていた上でこの合コンをセッティングしたこともあり、榊はいつもより下手に出て頼んできたのだろう。 榊「お前も女子の1人くらいお持ち帰りしてみたら?」 玲「全力で遠慮するね。自分の時間を知らない他人に費やしたくないし」 榊「やっぱお前、口開けば残念な男だよな」 玲「合コンキャンセルしてもいいけど?」 榊「ごめんごめんごめん。明日だけはマジて頼むって」 玲「明日だけだからな」 そんな会話をしながらキャンパスを出て、榊とは別れた。 直帰しようと考えていたが、天気が良くこのまま埃っぽい部屋に帰るのも何だか勿体無いような気がしてきた。 その足で前から気になっていた小さなカフェにでも寄ってみようと歩き出す。 「今日こそは、開いてるといいな」
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