いっそのこと。

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駅前通りから少し逸れた人通りの少ない路地に、その店はあった。 と言っても、元々この道は帰りのルート的に通る場所。 ここを通る度に気にはなっていたのだ。 両サイドをひび割れたコンクリ外壁の建物に挟まれる形で、例の店はポツリと佇んでいる。 建物自体は派手なわけではないが、俗にいう”ビンテージ感”漂う小洒落た雰囲気だ。 しかしそれとは別に、不思議と目を引くというか、なぜか異様に気になって仕方のない感情が以前からあった。 周囲は古めかしいい雑居ビルなどが立ち並ぶ何とも渋い場所。 いつもは、どうせ開いていないだろうと諦め半分で店の前を通っていた。 かれこれ3年間ここを行き来しているが、一度も開いているところを見たことが無かったからか、余計に気になってしまっていたのかもしれない。 店の目の前までくると、思わず息を呑み込んだ。 いつもは通りに面した窓にカーテンが閉じられ、明かりなど一切灯っておらず、かすかな物音すらもしない建物から 灯りが漏れていたのだから。
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