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Stellato
木製の扉の前に立ち、ドアノブを引く。
扉は何の抵抗もなく軽いきしみ音と共に開いた。
店内を見渡すと、外から見る以上に不思議な空間だった。
小さいはずの建物の中は天井がやけに高く、吹き抜けの先に2階がある。
奥行きもあり、街中のビルに囲まれた場所にあるとはとても思えなかった。
店内には微かな精油の香りが心地よく漂っている。
ただのカフェだと思っていたが、どこか様子が違う。
カウンター席の向こうには綺麗に並べられたカップやグラスがある。
しかしその他のスペースには、何に使うのかわからないようなアンティーク雑貨のようなものや、天球儀のようなものが煌びやかに、そして所狭しと置かれている。
店内の照明はキャンドルやランタンのみのようで、少し薄暗い。
そこはまるで、ファンタジー小説にでも出てくるような魔法使いの部屋のようだった。
言葉にできない幻想的な雰囲気に圧倒されていると、店の奥から人が出てきた。
「こんにちは」
挨拶をしてきた人物は、身長が高く顔の整った青年だった。
瞳の色から日本人ではないことは察することができたが、見たことのない色
だ。
玲「あ、どうも.......」
同じ男性であるにも関わらず、見惚れてしまうほどに美しく、どこか神秘的な雰囲気を纏った青年を前に思わず凝視した。
「ここ、すごいでしょ」
呆気に取られる俺を見て、青年はにっこりと微笑み話した。
玲「あ、はい...。あの、ここって何屋さん...ですか?普通にカフェだと思ってたんですけど」
青年「んー、何屋ってことはないよ。キミがカフェだと思うならカフェだ」
玲「よくわからないんですけど、じゃあコーヒーは飲めるんですかね」
青年「勿論。まぁ立ち話も何だからそこに座って」
理解があまり追いつかない会話のまま、カウンター席に促される。
カウンターの卓面は透き通ったガラスで出来ていた。
玲「すごっ......」
青年「綺麗でしょ。何飲みたい?」
玲「えっと、じゃあホットコーヒーで...」
青年「OK、酸味と苦味はどっちが好き?」
玲「......酸味、ですかね」
青年「いいね、じゃあ今淹れるから少し待ってて」
青年は笑顔でそう言うと、豆を取りに行ったのか店の奥へ消えていった。
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