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何度見渡してみても、やっぱり不思議な空間に変わりはなかった。
外から見多時の屋根の高さと天井の高さが合わないのだから。
トリックアートでも描かれているのかと思うほど奥行きがある。
だが、目を凝らしてよく見てみるとそれがトリックアートではないことがすぐにわかった。
玲「え.........、星?」
高い天井と思われるところの色は紺と黒の境目のような暗い色だ。
その暗がりの中に、小さく瞬く光が幾つもあった。
時折流れ星のようなものが視界のはしで横切ることもあった。
そこへ先ほどの青年が、出来上がったコーヒーを持って戻ってきた。
青年「お待たせ、僕の自慢のブレンドコーヒーだよ。あ、でもちょっと濃いめかも」
玲「ありがとうございます」
ひとまず、出してくれたコーヒーに口をつけた。
口に含んだ瞬間、ハッとした。
今まで眠気覚まし程度のコンビニコーヒーから有名な老舗喫茶の本格コーヒーまで飲んできたが、今飲んでいるものは群を抜いて美味しい。
迷うことなくそう感じた。
酸味の中にほんの少しの甘みとしっかりとしたコクがある、不思議な味わい。
飲み込んだ後に鼻から抜ける香りの余韻が堪らなく良い。
玲「何これ、ちゃんと酸味があるのにクセが少ない...」
青年「そりゃあね。選ばれた人しか飲めないコーヒーなんだから、美味しいのは当然だよ」
玲「選ばれた人しか飲めない?」
青年「そう。もう気付いたんでしょ?天井が空だってこと」
玲「あれ、トリックアート...じゃないんですか??」
玲の言葉を聞いた青年は愉快そうに笑って答えた。
青年「まさか。あれはちゃんと本当に見えている”星空”だよ」
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