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「あ、いや、大丈夫ですよ!創太重たいですし、これから夕飯の材料を買い足しにスーパーにも寄って行かなきゃならないので」 部長の家もこの辺りだということは、ちょうど帰宅中だったということだ。 私と創太はこれからスーパーに行くので、部長が通ってきた道を少し引き返す形になる。 さすがにそれは申し訳ないとやんわりお断りすると頭上から創太が、   「今日はね、ハンバーグなの!メイちゃんのハンバーグ、おいしいの!」 と会話に加わってきた。 「おー、ハンバーグか。いいな。じゃあ尚更創太くん連れて買い物は荷物とか大変じゃないか?東さえ迷惑じゃなかったら、俺はこの後特に予定もなくただ帰るだけだからスーパーも付き合うよ」 ……なんて優しい人なんだろう。 さりげない気遣いはさすが営業部部長。 でも、こんな所をまた誰かに見られたらどんな噂になるか……。 一瞬そんなことが頭をよぎったが、別にやましいことをしているわけじゃないし、見られたら見られたでこの状況を正直に話せばいいだけだ。 こんなに親切に申し出てくれているのに断る方が申し訳ないと思い、ここはありがたく部長のご厚意を受け取ることにした。 「ありがとうございます。じゃあお願いしてもいいですか?」 「もちろん」 ニコっと微笑まれ、その笑顔に思わず見とれてしまう。
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