8780人が本棚に入れています
本棚に追加
/119ページ
本当に預かることになったのか、それとも断る口実なのかは読めなかったが、このチャンスを逃す訳には行かない。
創太くんを預かるなら創太くんも一緒に出掛ければいい。
すぐに電話をして、
「……東、お姉さんから許可がもらえたら、今日は創太くんと3人で出掛けよう。……逃がさないよ?」
ニヤリと笑ってそう言えば電話の向こうで東が固まる気配がする。
……逃げようとしてたな。本当に素直な奴だ。
お姉さんが創太くんを預けに来る前に東の家へ向かう。インターホンを鳴らして出てきた東にオレはハッとした。
普段はオフィスカジュアルで大人っぽく見える東が、今日は黒いTシャツにデニム、その上からストライプのロングシャツを羽織って普段は下ろしている髪をルーズに1つに纏めていた。
それがいつもより少しあどけなさを感じさせるのに妙に色っぽくも見えて、思わず抱き寄せたくなる。無言で見つめ合うこと数秒。
「……何見惚れてるの?」
そう言うことで何とか思い止まった。
「……っち、違いますから!」
慌てる東を見ていつもの自分を取り戻す。
「ハハッ、冗談だよ。オレは東に見惚れてるけど。その格好、可愛いな」
普段の俺は絶対こんなセリフ言わない。柄じゃない。でも東には言いたくなる。
最初のコメントを投稿しよう!