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その後ゴーカートに乗ったが、東の運転センスの無さには驚いた。
どうしてこんなストレートコースで左右にガンガンぶつかって来るんだ……。
「だって私免許持ってないですし!それにハンドル結構取られるんですよ!」
そう膨れっ面で答える東。……つついてやろうか、その可愛いほっぺ。
「……ゴーカートに免許は関係ない。センスの問題だ。東はもう絶対車の免許は取るな」
それからもいくつか乗り物に乗り、16時前には帰路に着いた。ナビにお姉さんの家の住所を入れ、およその到着時間を東にメールしておいてもらった。
創太くんは車が動き出すとすぐにこてんと寝てしまった。とてもはしゃいでいたからな。
東も途中までは起きていたが、いつの間にか窓にもたれて眠っていた。
眠っている東は起こさずに創太くんをお姉さんの元へ送り届けた。
東のマンション前に到着し車を停めて、無防備であどけない寝顔を眺める。
……起こすのがもったいない。
すると突然東の目からぽろり、と涙が一筋溢れる。
「……や……だ、行かないで……そ……すけ……さん……」
俺の名を呼ぶ。……俺の夢を見ているのか?
そっと東の頬に手を添えて涙を拭い、東、と呼びかける。
静かに開いた虚な瞳が俺を捉えた瞬間、東がぎゅっ、と俺の首に抱きついてきた。
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