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「創太くん、俺は3歳じゃないよ。でもにんじんは苦手だ」 と真面目に答える部長がますます可笑しくて、もう笑いが止まらない。 ペースを取り戻すどころか、乱されまくりだ。 すると「東もそんな風に笑うんだな…」と、一瞬困ったような、でもまるで愛おしいものでも見るかのような目で見つめられる。 でもそれは本当に、本当に一瞬で、次の瞬間には、 「……東、笑い過ぎだ」 とおでこを小突かれた。 「……ごめんなさい。でもうちでは好き嫌いする子はご飯が食べられません」 笑い過ぎて浮かんできた目尻の涙を拭いながら悪戯っぽく隣の部長を覗き込めば、そっと顔を逸らされ、 「……食べるよ、にんじん」 と答えが返ってきた。 ー残りの食材をカゴに入れてお会計を済ませ、私たちはスーパーを後にした。
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