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「……よかった。営業部の仁科がこの前東が小さい子供と手を繋いで歩いてるのを見たって騒いでてさ、びっくりしたわー」
仁科くんは進藤の後輩である。
「私はその噂を真に受けた進藤にびっくりよー」
日替わり定食の白身魚のフライをつつきながらサラッと切り返す奈美に思わず苦笑いになる。
「いや、別に真に受けたわけじゃないけど、東は仕事も正確で丁寧で、営業部の奴らに人気あるからそういうのすぐ噂になるんだよ。
でも東の醸し出す雰囲気から子供いたとしても妙に納得できるというか……」
「納得するな」
私は進藤のおでこに軽くデコピンしてやる。
いてーっとおでこをさすりながらごめんごめんと謝る進藤。
仕事ができるとかできないとか、人気があるとかないとか、噂が広がる理由にそんなの関係ないと思う。
噂好きな人間は、どこの世界にも一定数いるのだから。
「進藤、お昼は?」
と奈美が聞くと、ちょうど「進藤せんぱーい!もう食べちゃいますよー!」と窓側の2人掛けのテーブルの方から進藤を呼ぶ声がした。
あれは噂の元凶、営業部の後輩仁科くんだ。
「うん、これからなんだ」
今行くー!と声を掛けて去ろうとする進藤に、
「仁科くんにしっかり訂正しておいて」
と念を押しておく。
おう!と言いながら進藤は仁科くんの方へと戻って行った。
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