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「ありがとうー助かるー」
今持ってくるからちょっと待ってて、そう声を掛けてキッチンへ戻ろうとすると、
「あれ、誰か来てるの?」
と姉が玄関先に並んでいる部長の革靴に気づいた。
なーにー、だーれー?ひょっとして…とちょっとにやにやそわそわ奥のリビングを覗き込み興味深々の姉。
「ちょっ、お姉ちゃんちっ、違うのっ」
リビングのドアを隠すように私は両手を広げて
立ち塞がる。
姉には少し、いやかなりミーハーな所がある。
最近浮いた話の1つもない妹の家に、男物の革靴があるとなれば尚更だ。
「ぶちょーさんだよー!」
私の代わりに創太が答える。
「ぶちょーさん?」
頭にはてなが浮かんでいる姉に対して、
「あ、うん、私の職場の上司でねっ、家もご近所でたまたまバッタリ会ってスーパーの買い物も付き合ってもらっちゃったり、創太にも良くしてもらったからお礼に一緒に夕飯どうですかってお誘いしたのっ」
と慌てて一気に捲し立てる。
別にやましいことは何もないのに、妙にドキドキして顔が赤くなってしまう。
へぇぇー、とニヤニヤしている姉。
「ぼくプラレールで遊んでもらったんだー」
そう創太が言うのと同時に、ガチャっとリビングのドアが空いて部長が顔を出した。
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