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ーその後は2人でダイニングテーブルで向かい合ってビールを飲みながら、常備していたビーフジャーキーやチータラ、ピーナッツなどを酒の肴に、社内の話とか創太の話とか当たり障りのない話題で盛り上がった。 開け放した窓から流れてくる風が、程よく入ったアルコールと、部長を意識して少し赤く火照った顔をそっと冷ましてくれた。 そうして部長はビール1缶飲み終わると、 「今日はご馳走様。また次楽しみにしてるよ」 と極上のスマイルを残して帰っていった。 もともと広岡部長に対して、憧れはあった。 かっこよくて仕事もできて面倒見もいい。 誰に対しても偉ぶることなく、決して感情に任せて発言したり行動したりしない。 トラブルが起きたっていつでも冷静に的確に対処し、ミスした部下のフォローも完璧だ。 そんな広岡部長に憧れの念を抱く女性社員は少なくない。 私もその中の1人だった。 上司と部下。その一定の距離感を保った上での憧れ。 例えるなら芸能人に憧れる、あの感じ。 でも金曜日の一件で、私の中では上司と部下という距離から少し近づいてしまった気がする。 普段職場では見られない部長のいろんな顔。 家でじっとしていると、ついその部長のいろんな顔を思い出してしまい頭がいっぱいになるので、週末はひたすらに家事に没頭した。 余計なことは考えないように、掃除に洗濯に料理に。 没頭し過ぎて換気扇やベランダの窓など、普段大掃除の日にしか手をつけないような所もピカピカにしてしまった。 料理に関しては一週間分の作り置きおかずが出来上がる始末だ。
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