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「……進藤と東は、付き合っているのか?」
部長が不意にそんな質問をするから、唐揚げを咀嚼していた私はうっ!と喉に詰まらせた。
それを一旦水筒のお茶で流し込んで、進藤の隣の部長を見やる。
「いやいや!付き合ってませんから。このくだり、3人の中ではお決まりの流れなんです。全然、そういうんじゃありませんから。ねっ、進藤!」
そんな誤解されたらたまったもんじゃない。
私は必死に弁解した。
進藤の方はというと、さっきとは打って変わって静かに部長を見つめている。
いや、そこは否定しようよ……!
奈美も何故か大人しい。
ああ、もうどうすれば……!
すると、
「あれ?珍しいメンバーで昼飯食ってるなー」
と、のんびりした声が背後から聞こえてきた。
「ま、間宮部長!お疲れ様です!」
振り返れば、総務部の間宮部長だった。
ナイスタイミング……!とりあえず助かった……。
「……ああ、間宮か。……お前ちょっと空気読め」
「はぁぁぁ〜?」
私にとっての救世主間宮部長は、ただ声を掛けただけだというのにこの仕打ちに、思いっきり眉間に皺を寄せた。
「お前は俺に対してほんと相変わらずだなー……」
苦笑いしながらポリポリ、と人差し指で頬を掻く間宮部長。
そう言う間宮部長を見事に無視して、
「東、卵焼き美味かった、ご馳走さま」
そう言って広岡部長は椅子を元の場所に戻して去って行ってしまった。
「……芽衣子、今日いつもの所で」
部長を目で追いながら奈美がこそっと耳打ちする。
結局、居酒屋に連れ込まれて全て吐かされることになりそうだ……。
そうして変な空気を残したまま食事を終え、午後の始業開始時間となったのだった。
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