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「芽衣子、広岡部長と何かあった?」 奈美と定時で上がった後、私たちが"いつもの所"と呼んでいる個室居酒屋で、生ビール中ジョッキを片手に奈美が問う。 この居酒屋は会社のある北口とは反対の南口にある。 そしてちょっと路地を入った所にあってしかも個室なので、会社の人や知り合いに聞かれたくない話がある時はいつもここに来る。 「……え、部長と?何で?」 焼き鳥のぼんじりを食べながら、平静を装う。 奈美はやたらと勘がいい。こういう話題の時は特に。 昼の出来事で、何かを感じ取ったんだろう。 「昼間の広岡部長のあの反応、進藤にヤキモチ焼いてるみたいだった」 「ヤ、ヤキモチ……⁉︎いやいやいや、部長が進藤にヤキモチなんて焼かないでしょう」 突然の発言にぼんじりを喉に詰まらせそうになり、慌ててビールで流し込む。 今日の私は唐揚げやらぼんじりやら、やたらと喉に詰まらせている気がする……。 「だから何かあったのかって聞いてるのー。部長が進藤にヤキモチ焼くなんて、芽衣子と何かあったとしか思えないでしょ」 胸あたりまであるダークブラウンのふわふわの髪を揺らしながらぴしっ!と向かい合う私を指さす。 ここまできたら奈美はもう誤魔化せない。 観念して先週の金曜日のこと、今朝のことを洗いざらい話した。 今週の金曜日の約束のことも。
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