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「う、うん、まあね」 並んでエレベーターに向かいながら、綻んだ顔を整えて答える。 「ふーん……。それよりさ、今日の夜って暇?ちょっと付き合って欲しいんだけど」 6階から降りてくるエレベーターを待ちながら、 ちょっと真面目な顔をして言われた。 「あ、ごめん、今日は先約があるからダメなんだ。また別の日でもいい?」 「俺も今日がいいんだけど。どうしても、ダメ?」 進藤には珍しく食い下がってくる。 いつもとは違う真剣な色が瞳に宿っていて、ちょっと気になったけど、 「うーん、今日の約束は前から決まってたことだから。別の日にまた進藤との時間作るよ。それじゃダメ?」 小首を傾げながら隣の進藤を見上げる。 すると、ちょっとハッとした顔をして私から少し目を逸らし、 「……んー、わかった。じゃあまた今度、絶対な」 そう言ったタイミングでエレベーターが到着し、その話はそこでお終いになった。 人の流れに乗って乗り込む。 5階に到着し、「おはようごさいまーす」とそれぞれ自分の席に向かう。 進藤のことは少し気になったが、私は仕事が始まってからも、部長からのメールを時折見返しては本当に今日また一緒にご飯を食べるんだなと実感する。 その様子を奈美には生温かい目で見守られた。 今日までに、任されている仕事をあらかた頑張って片付けておいてよかった。 部長からメールをもらってからはもう今日は何を作ろうか、そればかり考えてしまっていたからーーー。
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