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「そこでちょっと雨宿りさせてもらおうか」
そう言って部長はすぐ先のタバコ屋の軒先を指差した。
「はい!」
2人で小走りで駆け込む。
「すみません、ちょっとだけ雨宿りさせて下さい」
タバコ屋のおばあちゃんに部長が声を掛けるとにこにこしながら、
「急に降られて大変だったねぇ。好きなだけ雨宿りしていきな」
と快く雨宿りさせてくれる。
これで拭きな、とタオルまで差し出してくれた。
ありがとうございます、と2人でお礼を言う。
空を見上げると正にバケツの水をひっくり返したような雨だ。
お借りしたタオルで頭や肩、腕を順番に拭いていく。
部長も片手で拭きながらもう片方の手でスマホの雨雲レーダーを確認し、しばらくは止みそうにないな、と呟く。
「良かったら、傘を貸そうか?また今度返してくれればいいからさ」
するとタバコ屋のおばあちゃんが有難い提案をしてくれた。
「え、いいんですか?」
「ああ、構わないよ。困った時はお互い様だからねぇ」
にこにこしながら1度奥に引っ込み、しばらくしてシンプルな紺色の傘を1本持ってきてどうぞ、と差し出してくれる。
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