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どこかの家から流れてくるカレーの匂いが鼻腔をくすぐる。
時刻は午後5時半。
夕暮れ時とはいえ、もうすぐ本格的な夏が来る前の今の時期はまだまだ明るい。
金曜の夜というのもあって、いつもより人通りが多い気がする。
「創太ー、お腹すいたね。夕ご飯何食べたい?」
「ハンバーグ!」
「おっ、ハンバーグか、いいねぇ。じゃあさ、スーパーでハンバーグの材料買って帰ろっか!」
玉ねぎと挽肉を切らしているから買いに行かなくちゃ。
ついでに他の食材も買って帰ろう。
スーパーは会社と保育園の間に位置するので、来た道をちょっと引き返す形になる。
家の方に向かって歩き出していた私たちはくるっと方向転換した。
すると突然創太が「あ!」と、私と繋いでいた手を離して駆け出して行ってしまった。
一瞬のことで引き止められず、慌てて追いかける。
「創太、1人で走って行ったら危な…」
い、と言い終わる前にドンっ!と創太は前から歩いてきていたスーツ姿の男性にぶつかってしまい尻餅をついた。
「創太!1人で走って行ったら危ないからダメでしょ!」
と、尻餅をついた創太を起こしながら、創太がぶつかってしまった男性にも「すみません!大丈夫でしたか⁉︎」と声を掛ける。
「俺は全然大丈夫です。創太、くん?は怪我はない?」
その男性は膝を折って創太の目線まで屈み、創太の頭を撫でながら問う。
こくんと頷く創太にホッとしたようによかった、と呟き立ち上がった所で初めて私と目が合った。
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