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「部長、お待たせしました!出来上がりました」
「うん、すごくいい匂いがする」
パソコンに向かっていた部長がこちらを見て、優しく目を細めた。
パタン、とパソコンを閉じ、部長がダイニングテーブルの方に向かってくる。
部長の家のダイニングテーブルは4人掛けなので、うちで食べた時よりもゆったりと料理を並べることができた。
最後のお皿をテーブルに並べ終えた所で、部長が「東、何飲む?」と聞いてくれる。
「ええーと、ビール頂いてもいいですか?」
冷蔵庫を開けた時にビールが冷やされていたのを見た。この前部長と一緒に飲んだ銘柄と同じだった。部長も普段からこの銘柄なのか、それとも今日のために用意してくれていたのか。
「ああ、もちろん。俺も飲む」
にこっと微笑み、ビールを出してグラスに注いでくれる。
そうして2人でダイニングテーブルに向かい合って座り、いただきます、と手を合わせた。
部長は美味しいとひとつひとつの料理に感想を言ってくれながらモリモリ食べてくれる。
鷹の爪を入れてちょっとピリ辛にしたきんぴらも、にんじん以外の野菜ときのこをたっぷり入れた豚汁も、あの日と同じだし巻き卵も、いい感じに照りの入ったぶりも。
時折、味付けの仕方なんかを聞いたりしながら。
「はぁー、本当にどれも美味い」
部長がそうやって私を見つめて優しく、満足そうに微笑むから、
「……部長のために、一生懸命作りましたから」
思わずそんな言葉が口を突いて出た。
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