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そしておもむろにまた食事を再開する。
……まるで、何事もなかったかのように。
椅子に座ってなかったら、たぶん腰を抜かしていたと思う。それだけ部長のキスは上手くて甘くて濃厚だった。
……部長、今のキスは……?
聞きたいことはいっぱいあるのに、顔も身体も火照ったまま、部長をぼーっと見つめることしかできない。
ブーブーブー。
その時、スマホのバイブの音が響いた。
部長がリビングテーブルの上に置いていたらしいスマホを確認しに行く。
「たぶん東のだ」
私の?こんな時に一体誰……。
……スマホ、どこやったっけ……。
まだ正常に働かない頭を一生懸命動かす。
ああ、バッグの中だ。バッグはどこに置いたっけ?
確かキッチンの入り口に……。
のそのそと立ち上がりキッチンの横に置いてあるバッグをガサゴソする。
ディスプレイを確認すると、進藤からの着信だった。
「……あ、部長、出てもいいですか?」
「ああ、構わない」
ありがとうございます、と呟いて電話に出る。
「もしもし進藤?」
部長がピクッと反応した気がする。
廊下の方に向かう。
「東?今大丈夫?」
「うん、少しだけなら」
廊下へ続くドアに手を掛けながらそう答える。
「明日、暇?」
「……明日?」
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