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「あれ、東?」
「広岡部長……⁉︎」
それは進藤の直属の上司であり、営業部部長である広岡蒼介さんだった。
広岡部長は進藤とはまた別の部類のイケメンだ。
艶のある黒髪を後ろに流して、切長の漆黒の瞳に精悍な顔つき、程よく筋肉質な身体がスーツを着ていてもわかる。
身長も、おそらく進藤よりもちょっと高いくらい。
そんな広岡部長が創太と私の顔を交互に見て何か言いたそうにしている。
これは、広岡部長もあの噂知ってるな……。
「あの、創太は私の姉の息子であって、私はシングルマザーではありません!」
先手を打ってそう言うと、ハハッと部長が面白そうに笑う。
「ごめんごめん、間宮から違うって聞いてたんだけどね」
静かに空気を震わすような、耳障りのいい低音ボイス。
部長の言う間宮とは、総務部部長で私と奈美の上司だ。
そう言えばこの2人は同期だと聞いたことがある。
間宮部長はこの前35歳の誕生日を迎えて、お子さんと奥さんにお祝いしてもらったと嬉しそうにノロけていたから、広岡部長も歳の頃はそのくらいだろう。
見た目は実年齢より確実に若いけれど。
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