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でも、ともう1人の自分が問う。
蒼介さんはどうして私を抱きしめたりキスしたりするんだろう。
男の本能としての行動なのか、それとも気持ちが伴っているのか。
このまま彼の魅力に引き込まれて好きになってしまうのが怖い。
彼にもし何の感情もないとわかった時、私はどうしたら良いのだろう。
ーーああ、そんなことを考えている時点でもう好きじゃないか。
流れる窓の景色を見ながらそんなことを考えていたら、いつの間にか眠りに落ちていたーー。
ーーーー
夢を見た。
蒼介さんと手を繋いで歩いている。
私は蒼介さんの方を見つめて嬉しそうに微笑んでいるのに、蒼介さんはにこりともせず前を向いたまま。
やがて目の前に綺麗な女の人が現れた。
顔ははっきり見えなかったが、その雰囲気が綺麗だと物語っていた。
そして蒼介さんは私の手を離してその女の人のもとへ去って行く……。
「……や……だ、行かないで……そ……すけさん…」
ーーーー
「……ずま、東」
ぽろりと流れた涙の感触と、そっと頬に触れた温もり。それに蒼介さんの声で微睡から目が覚める。
ぼんやりと、目の前に蒼介さんの顔。
……いる。いなくなってない。蒼介さんはここにいる。ホッとして目の前の蒼介さんに手を伸ばし首にぎゅっと抱きつく。よかった……。
「……東?寝ぼけてる?」
「……⁉︎すすすすすみません!」
慌てて蒼介さんから離れる。私は一体何を……!
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