8780人が本棚に入れています
本棚に追加
/119ページ
「送ってくれてありがとうございました」
ああ、また月曜日に、そう言う部長の声を聞きながら車を降りる。
「……東、俺はどこにも行かないよ?」
ドアが閉まる直前だった。不意打ちの言葉にハッとする。
……蒼介さん……?
その声と同時にバタン、ドアが閉まった。
走り出した車を見送りながら考える。
私は夢の中で確かに行かないで、と言った。
声に出していたのだろうか。
だから蒼介さんはどこにも行かないよ、と、そう言ってくれたのだろうか。
あの夢で私はとうとう自覚してしまった。
蒼介さんを独り占めしたい。意地悪な顔も優しい顔も他の人には見せないで欲しい。キスするのも抱きしめるのも私だけであって欲しい。誰にも取られたくない。
でも、蒼介さんの気持ちがわからない以上、この気持ちは知られてはいけない。知られたらこの関係が終わってしまうかもしれないから。
奈美は蒼介さんは私のことが好きだと言っていたけれど、自惚れて、勘違いして実は違いましたなんてことになったら私は立ち直れない、あの時のように……。
最初のコメントを投稿しよう!