7

1/12

8780人が本棚に入れています
本棚に追加
/119ページ

7

月曜日。いつものように出勤しエレベーターを5階で降りる。 オフィスに入って自分のデスクに向かおうとした時、くいっと手を掴まれた。 「……進藤?」 振り返れば進藤だった。 「……東、仕事始まる前にちょっといい?」 「……うん」 真剣な眼差し。たぶん、金曜日のことを聞かれるのだろう。あの後進藤からの連絡はなかったから。 手を引かれたままオフィスを出る。 どこに向かっているかはわからないが、この状態は人目を引き過ぎる。 すれ違う人から好奇の視線を向けられている。 「進藤、ちゃんとついて行くから、手、離して」 「……あ、悪い」 そう言って手を離してくれる。 向かった先は資料室だった。部屋に入り突き当たりまで行った所で「広岡部長と付き合ってるの?」と唐突に聞かれた。 進藤は私に背を向けたままなのでその表情は読み取れない。 「……え?付き合ってないよ?」 「……じゃあ何で金曜日、部長の家にいたの?」 進藤に部長の家に行くに至った経緯を説明する。 創太がきっかけで私の家で一緒にご飯を食べることになったこと、その時スーパーでの支払いをしてもらったお礼にまた今度ご飯を作って欲しいと言われたこと、そのお礼のご飯を作りに金曜日に部長の家にお邪魔したこと。 全て話すと進藤は、 「……っはぁぁぁ…。東は警戒心がなさ過ぎる」 と額に手を当ててため息をついた。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8780人が本棚に入れています
本棚に追加