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いつもは静かな牡丹の帰宅が、今宵ばかりはいささか賑やかであった。
理由は、連れてきた客人である。
「ようムゲツ、生きてるか?」
セイは図々しくも牡丹より先に戸に手をかけて、声を張り上げる。無月はいつもより帰りが遅くなった弟子を心配するような表情から驚いたものへ変え、二人を出迎えた。
「セイか。久しいな」
それから遅れて、牡丹の汚れた着物におやと怪訝な眼差しを向けてくる。見知らぬ客人を連れ帰ってどこか落ち着かない気持ちが、それだけですっと鎮まった。
「牡丹、何かあったのか」
「ううん、別に」
「コイツは鬼に食われかけたんだ」
その言葉に、無月の表情がさっと険しくなる。オレが助けてやったんだと胸を張るセイをしり目に、無月は手ぬぐいで丁寧に土を払ってくれた。
「大事はなかったか」
「平気だよ」
この位、牡丹にはなんてことなかった。けれど無月が心配してくれるのは嬉しかったので、優しい手にされるがままでいた。
一方セイは勝手知ったる我が家であるかの如くどっかりと座った。随分態度がでかい男である。
とはいえ無月はその振る舞いに何も言わなかったので、牡丹もどうとも思わなかった。汚れをざっと払い落としてから茶を出してやると、セイはぐいっと一気に飲み干す。
「で、この女はオマエの娘か? それとも嫁か?」
「弟子の牡丹だ」
開口一番に聞かれ、無月は平静のまま答える。
牡丹が手渡した湯飲みで一息ついてから、師はそれでと続けた。
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