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家の近くを流れている川に沿って下ると、天然の洞窟がぽっかり穴をのぞかせている。やや狭い入口を潜り抜けた中は色々と手を加えられていて、仕切りの布を越えた先はちょっとした広い一室位の広さがあった。ここが火灯しの作業場だ。
行灯で部屋を照らしてから、慣れた作業に取り掛かる、竹で骨組みを作り、輪の形にしたそれの周囲に真っ赤な和紙を貼る。それで提灯の出来上がりだ。
そして組み立てるのに必要な竹ひごや和紙などは、全ていつの間にか師匠が手配してくれていたのだ。
火灯しの作る提灯に秘密があるとするなら、牡丹が携わっていない部分の筈。そう思って、作業を進める傍らまじまじと素材を観察してみた。
鼻を寄せて間近で調べても、妙な匂いはしない。提灯と言えばここで作ったものしか知らないから、他の提灯との違いなんて分かるはずもなかった。
試しに棚を見分するも、元からどこに何がしまわれているか把握しているし、鍵がかかっている所もない。
日が暮れてきた頃合いを見計らい、そのまま灯篭へと向かう。火打石と火口は村で売られているものをそのまま使っているので、灯篭の方に仕掛けがある筈だ。
古びた石造りのそれはずっと昔に造られたものらしく、表面に赤茶けた汚れがこびり付いている。見た目は随分くたびれているのにずっと鬼を追い払い続けているのだから、不思議なものだ。
やっぱりよく分からず首を傾げながら、牡丹はいつものように火を灯す。
赤々と燃える炎は疑問に答える口を持たず、ただ辺りを明るく照らしていた。
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