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見覚えのない顔ぶれが数名道の端で集い、何やら話している。村の中で見たことのない彼らは皆、白い短冊に穴をあけたものを首から紐で下げていた。
村から浮いた人影がさっと一歩引くと、中央で囲まれていた姿が露になる。着ている袈裟のせいで体格が分かり辛く、額から白い布を垂れ下げているためその顔が判別できない。ぼうぼうに伸びた髪は男性的にも女性的にも見えた。
大ぶりの袈裟が動く度に、手に持った錫杖がじゃらじゃらとがなり立てる。空いた手がぬうっと、前へと伸ばされた。
「そこな小娘、臭う。臭うぞ」
低くしゃがれた男の声が響き、牡丹は反射的に数歩引く。枯れ木のような指でこちらを指さし、男は吠えた。
「この娘、鬼に憑かれておる!」
その大声は、道行く村人達の視線を集めるには十分だった。忌避に塗れた眼差しが遠巻きにこちらを眺め、ひそひそと小声で囁き合う。のたまった男の周りにいた者達は特に顕著で、ぎろりとこちらを睨んできた。村の者達と似た侮蔑の眼差しの根底には、男への狂信が燻っていた。
「なんと、おぞましや」
「巳曽良(みそら)様に祓っていただかねば」
妙な連中の言葉に、無表情のまま首を傾げる。特に最近体調に変わりがあるわけでもないし、牡丹は鬼を退ける火を扱う火灯しの弟子だというのに。
「あんた達が何を言ってるのか、さっぱり分からないよ」
思うがままぴしゃりと言い返すと、侮辱と取った者達が鼻白む。
布で隠された表情はその返答に何を思ったか、更に近寄ろうとした。
「お下がりください、巳曽良殿」
不穏な場に、冷静な声音が水を差す。弦次郎は牡丹たちと男の間に割り込むように立ち、人当たりの良い笑みを浮かべた。
「彼女は決して村を害する者ではありません。この場はどうかお引き取りを」
巳曽良と呼ばれた男は、弦次郎を窺うように顔を向けるそぶりを見せた。
骨の浮き出た腕をさっと横に出すと、剣呑な眼差しの取り巻き達が一息で鎮まる。
「ぬしの兄者に免じて、此度は退こう」
兄を持ち出した物言いで陰りを帯びた笑みには、気付いたのかどうか。
巳曽良はじゃらじゃらと錫杖を鳴らしながら取り巻きを引きつれ、この場から去った。
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