Love with R

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小笠原の女四人で仕切る夕飯まで 莉子と散歩に出ることにした 「私もお手伝いを」と最後まで渋っていた莉子を 「今回だけは勘弁してあげるから ほら、デート。デート」 らしい言葉で送り出してくれたのも姉達だった 「何処へ行くの?」 「何処かな」 「え〜、内緒なの?」 「そう、内緒」 手を繋いで川沿いの土手道を歩く 河口までの一本道の途中に現れた河川敷の大きな公園は 涼しくなってきた週末のお天気ということもあって 家族連れで賑わっていた 莉子の手を引いて公園の中を突っ切って歩く 広い公園の奥の奥に到着すると 珍しく誰もいなかった 「此処?」 「そ」 綺麗に刈られた芝生の広場の隅に ポツンと置かれた土管 戸惑い気味の莉子の手を引いて 迷いなく土管に近づくと ちょうど真ん中に腰を下ろした 「此処」 「ん?」 「地元の恋愛成就スポット」 「ほんと?」 「ほんと」 「なにをすれば良いの?」 「なにもしなくて良いんだ 二人で此処に座ることが目的」 「へぇ」 「ずっと座ってみたかったから 地元に帰るって決まった時、莉子を連れて来るって決めてた」 「嬉しい」 「俺も、嬉しい。莉子と座れて」 「フフ」 「サァ、河口までもう少し歩こう」 「うん」 手を繋いで歩くだけなのに 莉子と居ると時間は穏やかに流れていく この穏やかな時間を ずっと二人で過ごしていきたい 「莉子」 「ん?」 「結婚しようか」 「・・・っ。はい」 歩きながらのプロポーズに 莉子は驚きながらも応えてくれた 「てか、凛さん何回プロポーズする気?」 「結婚するまでずっと」 「全パターン覚えておかなきゃ」 意地悪そうに上がる口角にスイッチが入った 「アンタ、ハードル上げる気なの?」 「だって、ちょっと楽しくない?」 「あ〜やだこの子ったら」 ケラケラと笑いながら歩いたこの道は 莉子には言わないが、手の平に傷を受けた場所 上書きしたくて手を繋いだ俺の思惑に気付かない莉子に感謝しつつ 地元に帰ってきたとは思えないほど 穏やかな気持ちになったお陰で 心の中まで浄化されていくようだった
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