Love with R

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お互いの実家に顔を出した翌週 莉子の仕事終わりに合わせて レガーメの噴水広場で待ち合わせた きっと裏の従業員通用口から出て一階奥から来ると 壁にもたれて待つ俺の予想を裏切って 「お待たせ」 莉子は吹き抜けのエスカレーターから降りて来た 「お疲れ」 「うん」 「テッキリ奥から出てくると思った」 「だよね。此処で働いてると この吹き抜けのエスカレーターに乗ることってないからね? わざわざ四階で降りてみたの」 「降りて来たとこ悪いけど また乗るから」 「ん?」 キョトンとした可愛い莉子の手を引いて エスカレーターに乗ると 「凛さん、手を繋いだら営業妨害にならない?」 莉子は繋いだ手を気にして慌てている 「莉子と手を繋ぐためなら そんなこと、もうどうでも良いんだ」 そう言って繋いでいない手で頭を撫でると 一瞬驚いたような顔をして 次の瞬間には頬を染めている あぁ、なんて君は可愛いんだろ これまでそんな気持ちを 持ち合わせていなかったのに 莉子が現れてから 俺の心に愛しさが積もっていく 「サァ、此処」 「えっ」 二階でエスカレーターを降りた正面にあるショップには 【入店制限中】の立て看板が見えた それを避けて店内に入る俺を 「ちょ、凛、さんっ」 慌てて止めようとする これまた可愛い莉子 その様子も見ていたいが 今日は目的があって此処に来たから 我慢、我慢 店の奥にある工房スペースに着くと 店主が気配を感じたのか、タイミング良く立ち上がった 「おっ、いらっしゃい」 「できてるか?」 「チッ、急かしやがって」 状況が読めない莉子は俺と店主を交互に見ている 繋いだ手を握りなおすと 「ホォ、良いもん見せてもらったな」 店主の(そら)はニヤリと笑って棚から店名の入った紙袋を取った
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