Love with R

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「綺麗〜」 奮発して予約した最上階のラウンジは 支配人が一番見晴らしの良い個室を用意してくれていた 入って直ぐ窓に張り付いた莉子の隣に立って 沈む夕陽を眺める 「贅沢だよね」 「莉子の為だから」 「私?」 「あぁ」 「ありがとう」 こういう時に“勿体ない”とか“高そう”とか 萎える言葉を言わない莉子はやっぱり良い女で 繋いだ手を持ち上げると手の甲に唇を寄せた 「・・・っ」 手の平に傷跡が出来てからは恋愛から遠ざかっていたし これまで手を繋いで歩くなんて 可愛らしい恋をしてこなかった反動なのか いつでも触れていたい だから・・・ 「莉子」 「ん?」 「お爺ちゃんとお婆ちゃんになっても 手を繋いで出掛けような」 それもちゃんと言葉にしておく 「フフ、うん」 「笑ったな」 「だって、凛さんのお爺ちゃんとか 想像つかないけど、八つも上だから お爺ちゃんになるのも早いかもって思ったら、笑えた」 「八つか」 「そう、八つも離れてるんだよね」 こういう場合はどう答えてあげるのが正解か分からないから 想いはストレートに紡ぐことにする 「莉子」 「ん?」 「当たり前だけど、どう頑張っても俺が先に逝く」 「・・・え」 夕陽から俺に移った莉子の視線が 一瞬で涙を含んで揺れ始める 「もちろん、死んでもお化けになって莉子の側に居るから 寂しい思いはさせないけど」 「・・・っ」 「俺は小さい男だから、莉子の幸せは願ってやれない」 「・・・」 「だから。俺が死んでも、俺を想っていて」 「・・・うん」 「他の誰かを好きにならないで」 「うん」 「どうしても寂しい時は」 「・・・時は?」 「予定を早めて迎えに行くから」 「うん」 繋いだ手を離して、一度ギュッと莉子を抱きしめる そしてその首に、受け取ったばかりのネックレスを着けた 俺の印、第一弾 「・・・、これ」 シルバーのショップなのに プラチナで作って貰ったチェーンには R型のチャームがついている 抜いた穴にはそれぞれの誕生石を入れてもらった 莉子はエメラルド 俺はサファイア 「二人ともRだから アルファベットのR」 見えない莉子に俺のネックレスを見せる 「綺麗」 お揃いが欲しいと思った恥ずかしさを隠すように出てきたのは 「これで逃げられないな」なんて意地悪な口で 「凛さんもだよ?」 ちゃんと乗っかってくれる莉子に安堵して 「明日結婚するか」 調子に乗ってしまった
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