壊れた関係と気持ち

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迷っているうちに 凛さんが対応をしてくれたようで 気がつけば凛さんと二人だけになっていた 「莉子、ちょっとトイレにでも行って来て」 「・・・え」 「いいから、ちょっと落ち着いて来なさい」 「・・・ん」 促されるままトイレへと向かった ・・・ 「凛さん?」 「ん?」 トイレから戻ると凛さんは窓越しに外を眺めていた 「此処、見晴らし良いわね?」 「・・・うん」 「もう、引っ越したいでしょ?」 「うん」 そう返事をして隣に並んだ 街の中心駅から大通り沿いに徒歩十分 マンションの脇の道はお城へ向かう緩やかな登りの始まり 裏側に広がる城山公園や神社は 有名な桜の名所でいつも賑わっている ロープウェイやリフトもあるけれど 散策がてら歩きで登れる天守閣も人気のスポットで観光客も多い 更には、カトリック系の聖愛女学院があって 可愛らしい制服で溢れている 「気に入ってたのに」 「また探せばあるわよって言いたいところだけど」 そう言って窓の外から視線を戻した凛さんは 「怖いんでしょ?」 「うん」 引っ越せば解決するなんて思っていない もう、一人の部屋に戻ることを考えるだけで怖いのだ 「実家に帰ろう、かな」 「通勤に一時間半はかかるんじゃない?」 「・・・・・・そう、だけど」 洸哉に新しい住所を知られることの方がよっぽど嫌だから我慢するしかない 「ねぇ?」 「ん?」 「アタシと暮らさない?」 「・・・凛、さんと?」 「そう。立地も抜群だしセキュリティ は完璧 家賃も破格だし・・・なにより」 「なにより?」 「何かあれば守ってあげられる」 凛さんの瞳が優しく揺れて その手を取って良いのか考えるより先に 「・・・お願い、します」 頭を下げていた
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