高嶺の花が咲く?

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結局、夜の飲みには青木も加わることになった それより・・・ 「近くない?」 オフィスに戻りながら 隣を歩く青木がいつもより近いことに違和感を感じる 「とりあえず俺を利用しろよ」 「ん?」 「高嶺の花がフリーになったんだぞ? 牽制してないと大変なことになるだろーが」 「そう、かな?」 入り口近くにデスクのある総務課の真澄と違って うちの三課はパーティションで囲われた隅にある だから牽制なんてしなくても良いんじゃないかと思った私も デスクに向かって歩きながら 「莉子ちゃん」「中井さん」 やたらかかる声に青木の提案も悪くないかと思い始めていた 「な?」 得意気に顎をしゃくった青木が癪で 「青木がそこまで言うならね」 素直にはお願い出来なかった そんな私に青木は 「そう言うと思ったわ、お姫様」 降参とばかりに両手を小さく上げるから 「フフ」 結局笑ってしまった 「・・・っ」 そんな私を見ていたはずの青木は さっきまで余裕そうに見えたのに フッと顔を背けて自分のデスクへと戻って行った ・・・変なの 青木の奇行なんて今に始まったことじゃない 幼稚園から一緒の幼馴染を彼女に持つ彼は 熊のような風貌も合わせて一途で面白い 向かい側に腰を下ろす青木を見ながら ポケットの中から携帯電話を取り出して 凛さんへ短くメッセージを送った   [今夜は同期で飲み] 直ぐに既読になって [シメはおいで] 予想通りの返事がきたことに緩みそうになる頬を堪える そんな私を向かい側から青木が訝し気に見ていたなんて 凛さんのことで頭がいっぱいな私は気づかなかった
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