高嶺の花が咲く?

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終業のチャイムが聞こえると同時に慌しい気配を感じる 今日が週末ということもあって いつもより皆んなの片付けは早いのかもしれない デスクを片付けながら立ち上がると パーティションの向こう側がやけに騒がしいことに気づいた 視線だけを青木に向けると 「そこに居ろ」 デスクを回って私の元へと来た 「なんだろ」 首を傾げた私に 「行くぞ」 青木は呆れたような顔をしながらもピッタリと寄り添って歩き始めた 囲いを出た途端 「中井さんあのね・・・」 「莉子ちゃん今日って・・・」 「中井さん」 一斉に私に声が集中してきた 「・・・っ」 驚いて足が止まった私を庇うようにガードしながら 「中井は先約ありっす」 青木は「どうも〜」なんて軽く断りを入れながら連れ出してくれた 急ぎ足でフロアを抜けるのが精一杯で 後ろを振り返る勇気はない 「だからさ、中井油断し過ぎだって」 「油断?」 「お前、気がつけば笑ってんぞ?」 「・・・え」 「気づいてねぇだろ、これだから」 今日、片眉を上げた青木の呆れ顔を見るのは何度目だろうか 「無意識」 だって、笑っているつもりなんてない 私自身はいつもの無表情を貫いているつもりなんだもの・・・ 「一番酷かったのは昼休憩が終わってデスクに戻ったろ?」 「うん」 「あの時、携帯電話を操作してたよな?」 凛さんへメッセージを送った時のことだ 心当たりを確認した私に青木は呆れた顔をした 「あれが一番マズかった」 「マズイの?」 「彼女が居なきゃ俺が告ってた」 「なによ、それ」 「彼女は別として、俺は同期の特権を喜んでるんだ」 「・・・は?なにそれ、意味不明?」 「おま、なんてこと言うんだよっ」 「同期の特権ってなによっ」 全くもって意味の分からないことを話す青木を睨んでみるけれど 「中井と城崎に近づく権利だろーが」 結局、意味は不明だった
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