胸の内

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真澄のことだから、テッキリお洒落な店だと思い込んでいたけれど 着いたのは渋い雰囲気の和食屋さんだった 「新規開拓?」 「ううん。此処、叔母の店なの」 「・・・は?」 知り合って二年も経つのに 初耳だけど、と続けようとした私の腕を引いて 勢いよく引き戸を開けた真澄は 「ただいま〜」 ツッコミどころ満載で店内へと入った 「おかえり〜、お友達もおかえり〜」 「・・・ただい、ま?」 「奥の部屋に用意してるわ」 「ありがと〜」 カウンター越しに迎えてくれた叔母さんは 可愛い真澄とは違って和服に割烹着姿で色っぽい その姿からは想像つかないような ギャップさえ感じる軽いやり取りに呆気に取られているうち カウンターと小上がり席をすり抜け 奥まったところにある完全なる個室に到着した 「凄っ」 入ってすぐ一瞬で目を奪われるのは 何処ぞの武家屋敷かとツッコミたくなるような鎧、刀、掛け軸、壺 そして、王将と彫られたタブレット大の将棋の駒 「趣味悪いでしょ」 それらを一瞥してから私を見た真澄に うん、とも言えないから 「・・・渋いね」なんて苦笑い 我ながら上手い返事だったと思ったのも束の間 「さぁ座って」 厚みのある座布団に座った真澄は 私を上座へと誘導した 「・・・怖いんだけど」 「だよね」 鎧の鎮座する床の間に背中を向けるとはいえ、それに近い上座は怖い 「でもね、ずっと視界に入るコッチよりマシじゃない?」 「・・・確かに」 背後は怖いけれどここなら視界には入らない 「我慢する」 「懸命ね」 真澄は小上がりなら左右の仕切り以外オープンになっているから 個室のために此処にしたと簡単に説明してくれて 「おまかせコースにしたよ」 自ら注文しに行くと、烏龍茶を持って戻ってきた
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