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小納戸入鹿は今時珍しい七三に眼鏡でなければモテそうな顔立ちに真面目さを滲ませてゆっくりとお辞儀をした。
「では歌います」
「お願いします」
彼は一旦深呼吸するとスッと目を開けた。
「吾輩は猫である
昼間はいつも
猫を被るが
夜になれば
野生のハンター
暗闇でも平気なのだ
人の七分の一の光があれば
暗闇で光る瞳
タペタムの反射で
今日も餌を取る
あなたの為に
でもあなたの顔は強張って
吾輩の好意を拒む
猫に小判
主人に鼠
なんど拒まれても
吾輩はめげぬ
吾輩は猫である
名前は
そう
あなたのお好きなように」
「小納戸入鹿」
おぉおおおおー
観客の生徒からどよめきが起こった。
次いで拍手。
「これはまた、直球できましたね」
司会のセニョール西東も唸った。
「皆さん静粛に、静粛に願います!」
流石にこの詩歌トーナメントの創設者である小納戸塁さんのご子息、知識と軽妙さの中に韻を踏むというテクニックを入れて来た。
いや、もしかして韻を踏んだのは前の五月女彩月さんに影響を受けたのか?
とにかくもう一人いるのだから分からないが、このプレッシャーはキツいかもしれないと西東は危惧した。
しかし、そんな司会者の心配を他所に極楽寺礼華は、ジッと下を向いていた顔を上げて手をまるで友達に合図を送るように挙げた。
「できたぁ」
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