決勝戦お題

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「で、できましたか?」 「イエス」 「ではお願いします」 「はいよー」 陽気な掛け声とは裏腹にマイクの前で何か物憂げな表情を見せ俯いた。 暫し間があり彼女は顔を上げた。 「雨がうっすら降っていた ポンカンポンカンポンカンカン 陽気な音が鳴っている 猫の餌を入れていた 空き缶が雨で溢れかえる おばあちゃんは炬燵で丸くなってる まるで生きてる様に眠ってる 猫は 咎める様にニャーと鳴いた なにも出来ずに立ち尽くした 僕の代わりに鳴いている ポンカンポンカンポンカンカン うっすらと雨が降っている みんながわらった絵空事 おばあちゃんだけは笑わなかった その意味が今わかったよ 時間は巻き戻らないんだね 空き缶が今溢れかえる 猫は 知らせる様にニャーと鳴いた」 会場は静まりかえっている。 「極楽寺礼華」 彼女は思い出した様にそっと付け加えた。 ぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱち 徐々に広がっていった拍手は暫く鳴り止まなかった。 「……あ、ありがとうございました」 司会のセニョール西東は心の中でこれは、分からなくなったぞと感じていた。
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