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全身黄色の露出度高めのドレス
もうすぐ旅立つアゲハ蝶のように私は輝きを放っているとメンバーから褒められた。
本当の意味でのスターになったんだって初めて自分で自分を褒めたいと思う。
直筆の手紙の字は三日もかけただけあって丁寧に書いたつもり
でも本番になると涙で字が滲んじゃったから折角ゆっくり書いた時間も無駄になってしまった。
それでも最後はメンバーとアンコール恒例のキラキラの輝きを肩を組み合いながら歌った。
本当に 本当にこれが私の最後のパフォーマンス
五時間後には私は一人の一般人として新たなフィールドに旅立つ。
あぁあの人さえいなければ 私はまだ三年間はグループに在籍したのに
もうメンバーには相談したけど一向に解決できない問題だった。
ライブを終えてスタッフから花束を貰って、
2時間かけて写真を取り続けて、インスタグラムに投稿して 別れを告げた。
家に帰ると また見たくもないプレゼントの山が散乱していた。
送り主は たった一人
初めて手紙が届いた時には丁寧にそして達筆で、内容もボキャブラリー溢れてあっという間に読み進めてしまった。
ラジオでも手紙について語るくらいの文才があった。
逆効果だった。
無駄に火をつけてしまったと後悔している。
手紙を送る頻度はどんどんと増え続け、その度に字が幼稚になり、酷いときにはいつまでも愛してるだけが書かれた手紙が一ヶ月に20通届いた日もあった。
唾が散乱した手紙すらあった。
ゴミ袋一枚を手紙で埋め尽くす。
贈り物も頻繁に届いた。
ピアスにネックレスに香水
アイラブユーとプリントされたくまのぬいぐるみに人形
いくら質屋に出しても、事務所に相談しても収まることはなかった。
「皆様にお願いです。
プレゼントやファンレター 送っていただいて嬉しいのですが過剰に同じものを送ったり、意味がわからない手紙を大量に送られると私共も非常に対応に困るので控えていただけると嬉しいです。」
ラジオで勇気を振り絞り警鐘を鳴らした。
多くのファンがエールを送ってくれた。
でもあの人は誹謗中傷を始めた。
事務所にクレームを入れると脅した。
真っ黒に塗られた手紙に赤い字で大好きだよ
もう真っ白にするしか他はなかった。
一般人になることであの地獄のようなプレゼントが解放される。
私はグループから旅立つとともに纏わりついた地獄から抜け出せる。
その男の名は 田沼 潤
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