本望

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卒業を発表をしてからの一ヶ月は十二年の活動の間で一番はやく過ぎた。 ラストシングル 「星の雫」のセンターに選ばれ、最後のダンスレッスンに励んだ。 ソロシングルも提供されて、レコーディングにも追われる日々。 一つ一つの活動を終えるごとに卒業が近づいていく。 時間は待ってくれない。 当たり前だけど 喧騒感が漂っていたあの頃の記憶を蘇らせると喪失感は大きい。  唯一十年以上続けたレギュラー番組の「キラキラ レボリューション 」 訳してキラレボ 私の出演も最後を迎えて 司会のフォートナムから花束を渡される。 この回が放送される頃には私はもうこのグループにはいなくなり、一人の女性としてまたに溶け込む。 「十数年もの間 私を応援してくださりありがとうございました。 ファンの皆さま メンバー フォートナムのお二人 本当に色々な人に助けられました。 かけがえのない時間を過ごしていただけたのも皆様のおかげです。 これからは一人の一般人としてキラキラスターを応援し続けていきます。 本当にありがとうございました。」 段々と喋るたびに思い出が走馬灯のように蘇り、言葉が詰まり涙が溢れていく。 フォートナムの二人も今までで一番優しい表情で見守ってくれた。 コワモテのリアクション王として位置付けされている酒井さんも、天を見つめて流れる涙をこらえる。 「酒井さん 泣いてるじゃない 珍しい。 初めてじゃない? そんなに泣くの。」 「やっぱり今までも多くの卒業生を見守ってきましたけど、鈴木は当初からいましたから。 本当にあっという間だったなって思って。」 そんなお二人を見て我慢してた涙が一気に流れ出した。 本当に今日でこの番組から去る。 3ショットを取り終え、また会うことを誓ってスタジオに別れを告げた。 卒業コンサートまで3週間を切っていた。
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