本望

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コンサート会場のドームまで電車を利用するけど、今日は特別に混んでいる。 私と同じようにストライプ柄のシャツに大きなリュックサックを背負って、ヒカリちゃんの名前が入ったタオルを首にかけたオタクが四方八方にいる。 流石の僕も周りに同じような人がいなかったら一般人のフリをして溶け込むけど、これだけ同志がいればわざわざ隠さなくても問題はないだろう。 ギュウギュウ詰めの息苦しさもヒカリちゃんの為ならなんとも思わない。 ドーム会場についた途端 スタートの号砲が鳴らされたかのようにオタクたちが一斉に走り出していった。 僕も普段は運動しないけれど、この時ばかりは息遣いが荒くなっても、汗がダラダラと流れててもドームまで一直線に走り続ける。 例え周りが僕を怪訝な目で見てても何にも気にすることはないさ。 何回も言うけどヒカリちゃんへの愛情は僕が一番にあるんだから。 ドームへ着いたらいち早く物販へ駆け込む。 三千円の名前入りタオル 千円の顔写真入りのうちわはもちろん、シングルCDにちなんだグッズだって売られてる。 今日はヒカリちゃん卒業記念ということもあって、ヒカリちゃんが考案した 猫のメグが描かれたお手製の財布とヒカリちゃんデザインのマグカップを買うことに決めている。 いつも物販では七千円ぐらいには抑えてるけど、この日は奮発して一万円分も買っちゃった。 何も同じものを買わなくたっていいのにとコソコソと話してる男は全くわかってない。 デザインとか柄とかが違うからコレクションを制覇したい欲求があるんだぞって説教したかった。 無論私にはそんな勇気も時間もないからグッズを買ったらすぐにチケットに書かれた席について、タオルを頭に巻いてサイリウムを膝下に置いて ヒカリちゃんのTシャツに着替えて開始時間を待つ。 開始時刻は午後の五時 今の時間は四時少し過ぎ どうりでまだ周りは空席が目立つわけだ。 一時間も前に来ないなんてもったいないと思う。 だって会場特有の雰囲気が楽しめるわけじゃん。 会場でしか味わえないハラハラドキドキ感も ドームの照明 音響も演出の一つであってギリギリに来ちゃうとそのドキドキ感が全く楽しめないんだから、いつもゆっくりと歩いてるファンを見ると勿体無いなと思う。 待ってる時間はどうしてるかって? それはもちろん会場の雰囲気を味わいながら グッズを見つめて楽しみに待ってるさ。 こんな贅沢な時間は無い。 ほらグッズを見てニヤニヤしている間にもどんどんとファンが入ってきて段々と席が埋まっていく。 開始十分前 影ナレーションが始まった。 勿論 担当はヒカリちゃん あと二人はきらりちゃんと 彩乃ちゃんでどちらも一期生。 「皆様おまたせしましたー 今日は私の卒業ライブです。 きらり 彩乃寂しいねー 」 「もうキャプテンがいなくなるなんて想像も出来ない!  でも最後のライブは いつもよりもいっぱいいっぱい いっぱい楽しもうね。」 「そうだね だからファンの皆も私達の強すぎる熱気に負けないくらい盛り上がってくれるかぁーい!」 「ウォーー」 「まだまだ」 「ウォーーーーー」 「こんな遠い場所でも聞こえるから どっちも準備はOKみたいだね。 じゃあ ヒカリ行こうか」 「勿論 これから私の最後のライブが始まるから 盛り上がって行きましょう! じゃあもう少しで始まるから待っててね!」 もう少しでラストライブが始まる。 誰にも負けないパワーと愛情をヒカリちゃんに伝える準備は完了した。
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