本望

卒業コンサートまで残り一週間
私の至極のセットリストも決まり、最後の練習に差し掛かった。
一日一日時が過ぎるたびに何回も踊ってきたダンスの重圧がのしかかる。
改めて二百曲近い数のダンスをそれもテレビでよく踊れたなと自画自賛する。

ずっと踊ってない曲も特集を組まれたら、思い出しながら抜き打ちで踊らされることもあったし、オリジナルダンスもやった。

辛いこともいつかは楽しい思い出に変わるよと小学校の担任の松井先生に言われたことがあった。
幼い私はキョトンとしていたけど、今の私だったらその言葉の意味がはっきりと分かる。
恩師の松井先生は二年前から行方が分かっていない。
数年前までは普通に連絡できたのに、ある日を境にポツリと連絡が途切れた。
一週間後にニュースが流れた
顔写真から見ても間違いなく松井先生だった。
今でも時折先生の顔がふと頭に浮かぶことがある。
最後の練習のその時まで頭にこびりついたまま離れることはなかった。

〜松井先生　一体あなたはどこに行ってしまわれたのですか？
出来ることなら、私の有終の美を飾るコンサートに来ていただければ嬉しいです。
私も最高の恩返しができるも思いますので〜

12時間にも及んだ最後の練習が終わった。
最後の練習と言っても、ライブ当日の朝に最終確認があるから最後とは言えないのかもしれない。
本番まであと二日　どうか無事に最高のパフォーマンスができますように。