本望

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ヒカリちゃんが卒業しても愛は変わらない。 きっといっぱいプレゼントを貰って使っているに違いない。 あの香水の匂いがするに決まってる。 ヒカリちゃんが一般人になってもプレゼント は渡し続けるさ。 住所は特定済み、勿論誰にもばれないように 今の世の中は便利。 投稿された写真から位置情報を辿って、些細な風景からでも本気を出せば簡単に住所がわかるんだもん。 実際にヒカリちゃんが自宅に入った事もこの目で確認してる。 サングラスにマスク 伊達メガネをかけて撒いてると思い込んでるみたいだけど、僕の目はそう簡単にごまかせない。 さて今日もヒカリちゃんの住所でプレゼントを送ろう。 テレビで欲しいって言っていたバッグを送ろう。 でも最近の僕はこれだけじゃ満足できないんだ。 悪い男に目をつけられないように僕がボディガードになってあげる。 欲を言えばヒカリちゃんの家に入ってお泊りもしたい。 決行日は明日 丁度有給休暇も取得してるし、ゆっくりできる。 この前に下見にでも行こうかな。 卒業してから初めてプライベートのヒカリちゃんが見られる。 「楽しかったね 今日も。 じゃあそろそろ帰るね。」 ヒカリちゃんが、  僕のヒカリちゃんが、 チャラいホスト風の男と一緒にいる だと いや これは妄想だ 付き合ってるわけがない。 きっとそうだ 友達なんだ。 それだったら私の許容範囲内だ これ以上見ても仕方がない。 だから今日は速やかに撤退しよう。 そんな僕の嫌な予感は的中した。 この日はヒカリちゃん一人だった。 あの頃の可愛さを保ったまま静かに家へと向かっていた。 僕は偶然を装った。 「あ、鈴木ヒカリさんですよね? ファンだった田沼って言います。」 「田沼さん?」 「そうです。 ファンレターも送ったことがあります。」 「あなたなんでここまで来たんですか? これ以上付き纏うなら警察呼びますよ。」 何を言っているのか分からない。 愛情なんて伝わってなかったの? いや恥ずかしがってるだけだろ。 「いや、ファンだっただけです、サインしてもらい」 「イヤです 早くこの場から去ってください。」 異変に気付いたホストがやってくる。 今日も二人きりだった。 「俺のヒカリに近づかないでください。 あなたのせいで、どれだけ傷ついてるかわかるんですか?」 このホスト 俺がどれだけ貢いだかも愛情の深さもわからないくせに偉そうなことを。 何が俺のヒカリだ ヒカリは僕のものだ 「傷ついてる? 俺はヒカリに貢いでるだけだ 偉そうなことを言うな。」 無我夢中にホストに襲いかかった、でも力の差は歴然だった。 その間にヒカリは警察を呼んだ。 側に石が転がっていた。 そして力のままに男の頭を殴った。 男はピクリとも動かなくなった。 そして大声で叫ぶヒカリの口を塞ぎ込んだ。 ヒカリも動かなくなった。 目だけはパッチリと開いていた。 僕はヒカリを抱きしめた。 まだ温もりが残ってて美しい瞳がじっと僕の方を見つめていた。 「これからずっと一緒だね。」 僕の目的は達成した。
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