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「構わぬ。しかし、中に入る必要はない。貴殿に一つ大事な事を伝えにきただけである。」
「はっ!」
父親は家に入らないと聞きホッとするも、礼儀正しく頭を下げる。
すると男は話を続けた。
「今日、ここで生まれた者は、魔王と戦う宿命を背負いし勇者である。その子が成人するまで、大事に育てるのだ。これは王命である。」
その言葉に驚きを隠せない父親
「そ、それはどういう事でしょうか!?」
「詳しくは言えぬ。だが、直ぐにわかるだろう。お主の子が普通ではないとな……。それでは頼んだぞ、勇者の父よ。」
男はそう言い残すと、父親の疑問に答える事なく馬車に乗ると立ち去った。
その場で茫然と立ち尽くす父親。
「なぜ……なぜ娘が勇者に……。」
父親は娘が生まれたら、可愛くお淑やかに育てていこうと妻と誓い合ったばかりだ。
それが魔王と戦う?
冗談じゃない!
俺の娘にそんな危険な事させられるか!
そう思った父親は、賢者に言われた事を胸にしまい、娘にはこのことを絶対に話さないと決意した。
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