僕のミーをシロと呼ばないで

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   可愛いお尻は、ふりふりと長い尻尾を猫じゃらしのように揺らした。  細い塀のブロックの上を器用に歩くミーは、ブロックのギリギリのところまでいくとひょんとその塀を下り、隣の壁と壁の間に入り込む。そして細い隙間に身体を潜らせた。  僕は焦った。細い隙間に、自分の無駄に大きな身体はどう努力しても入らない。  見失ってしまう!、と思ったときには遅かった。ミーは細い隙間をスルスル通って向こうの通りに消えていった。向こうの通りに出るには、どんなにショートカットしてでも4件先をぐるりと回らないといけないし、運が悪ければ横断歩道に捕まってしまうのだ。  僕は落胆して、ミーが消えてしまった細い隙間を恨めしく睨んだ。 「おい、知ってるか? この先の公園でドラマの撮影があるらしいぞ。滝本ユリエがきているらしい」 「ユリりんかっ!」  落胆した僕の背後を二人の男性が通り過ぎ、彼らの会話がたまたま僕の耳に入ってきた。思わずアンテナを張り巡らせた。  別に芸能界にそんなに興味があるわけじゃない。興味は無くとも、こんな何も無い辺鄙な場所でドラマの撮影があるというのはワクワクするものだ。しかも滝本ユリエといったら、最近話題の正統派アイドルではないか。清純派路線を突っ走る新人アイドル。爽やかなスポーツ飲料水のCMが思い浮かぶ。熱したグラウンドに真剣な眼差し、スタートを切った彼女が真っ直ぐに走る姿。 ...見たいなぁ。  自分の中にある野次馬な感覚に正直自分でも少し驚き、恥かしいなと思いつつも足は公園に向かっている。  話の種にはなるだろう。ミーを見失ってしまったし、また今度トライしよう。なんていい訳しながらウキウキする気持ちを隠した。
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