僕のミーをシロと呼ばないで

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「し~ろ~さ~ま~」  鼻に掛かるような声が、シロ様を探すように公園にこだまする。黄いビニールパーカーを着た小柄な女性が、困り果て成す術もないというような形相で公園の隅々を見回していた。  可哀想に、もうそろそろ来てやってくれと同情した。そう思ったのは、きっとこの声が自分の好みど真ん中だから、だけではなく、本当にどんよりとした空気が漂っていたからだ。もう誰もがシロ様、そろそろ来いよと心の中で思っていた。  鼻に掛かったような声は、何度も何度も繰り返しシロ様を呼んでいる。近くに居た黄色いビニールパーカーの男性は、「お前じゃないとシロ様は出てこないもっと声を張り上げろ」と女性を戒める。女性はその度に、持てる限りの力で何度も声を張り上げた。男性の戒める言葉と女性の張り詰めた鼻に掛かるような声は、ここに居る誰もが応援したくなる威力を持っていた。  シロ様、早く来い!  不思議な空気が流れる。彼女のシロ様を呼ぶ声がその空気を作り出していた。それは誰もが最後まで見守ろうという連帯感のようなものだった。さっきまで怒っていた叶野光も、スマホを弄る滝本ユリエもそれぞれに応援しているのが分かった。  僕も例外なく、最後まで見守ろうと心に決めた。  
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