僕のミーをシロと呼ばないで

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--8:00ジャスト。  僕は家にある古めかしい壁掛け時計に目をやった。古いっていっても、高級品だとか赴きがあるとかそんな大層なもんじゃない。安物のアナログ時計で、ただ古いだけだ。だから、すぐに壊れて正確な時を刻まない。ゆえにジャストではないのだけど、・・・そんな細かいことはいいんだ。  10月の少し冷たい外気を避けて、締め切った窓際で寝ているミーが徐に立ち上がった。窓際は、今の時間帯で一番暖かい場所。  しなやかな肢体を優雅にスッと動かしながら、向かおうとしている先は裏口の戸だ。いつもそこから、ミーは外界へと向かう。  今からミーは暫く僕の前から姿を消す為に、残酷にも僕を呼ぶだろう。裏戸のずい分傷だらけになった右下の部分をカリカリと爪で引っ掻きながら僕を呼びつける。  僕はその様子を知りながら気付かないふりをしてソファに座り、朝のニュースを見ていた。平日なら後15分後には会社に向かう時間だ。しかし今日は休日。だから、そのモードでゆっくりめの朝を満喫している演技を僕は行い、何食わぬ顔で合図を待つ。 ”カリカリカリ”  あーあ、嫌な音だ。それでもミーが僕を呼ぶから行かなければならない。  僕は足元で触れることができる距離までミーに近寄った。裏戸を開けると、生身の動物の温かさがスルリと通り抜けふわふわの毛が温かい。白い毛並みの後ろ姿は、僅かに開いた戸の隙間に消えていった。
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