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公園に辿り着くやいなや、もう既にある程度の人だかりが出来ていた。さすが小さな町だ。極秘だと思われるのに、一旦情報が流れれば町中を駆け巡るのに時間は掛からない。
照明やらなんやら撮影で必要な道具を、黄色いビニールパーカーを着た数名のスタッフが準備をしていた。近くの駐車場に止めた荷台トラックの存在がここから見えるし、撮影は本当らしい。
「キャー、ユリりん可愛い」「顔小さい」などという類の声があっちからもこっちからも聞こえてくる。本人らしい人物が、公園のブランコ近くに設置された椅子にゆったりと座っているのが見える。僕も一度拝もうと目を凝らしてそこを見遣った。
肉眼に映る滝本ユリエはテレビで見るよりも可愛かった。...が、役柄のせいか清純派というよりも、ヤサグレ娘のような印象を受けた。イメチェンか?テレビ局も思い切ったことをするなぁ、ま、ヤサグレてる方が好みではあるが...などとどうでもいい事を思いながら、引き返そうと踵を返した。
一度拝めばどうでもよくなる。もともと人ごみは嫌いだし、いつ始まるか分からない撮影を根気よく待つほど興味も無い。滝本ユリエにはもう会えたから自分的に満足してしまったのだ。
公園を出ようとしたまさしくその時だった。僕の耳にとんでもないワードが入ってきたのだ。
「おい、来たか?
シロ様」
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